医師の非常勤バイト、時給以外に見ている4つの基準

医師のキャリア

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早く帰るようになってから、手取りが1割ほど減りました。

子どもが増えて、意識的に定時で切り上げるようにした結果です。当然といえば当然で、勤務医の収入のうち時間外手当が占める割合は思っていたより大きかった。病院に残っていた時間が、そのまま金額として消えたわけです。

育児のために働き方を変えるという話は、たいてい「両立の難しさ」で終わります。でも実際に変えてみると、難しさの前に、もっと即物的な問題が来ました。収入が減る。

その減った分をどこで埋めるかを考えて、非常勤バイトの選び方を組み直しました。この記事は、そのときに作った判断基準の話です。

働き方を変えると、時間外手当が消える

まず数字の話から。

Dr.アルなびが2024年に実施した調査(子どものいる医師467名)では、43.0%が育児のために働き方を変えたと回答しています。内訳は女性医師83.0%に対して、男性医師34.1%。

この差は「男性の育児参加が進んでいない」という文脈で語られることが多いのですが、実際に変えた側から見ると、別の理由も見えてきます。変えると収入が下がるからです。

同じ調査で、育児中の医師の39.8%が「当直・オンコールなし」の勤務を選んでいます。当直をひとつ手放すたびに、月の手取りは目に見えて動きます。時短や定時退勤も同じで、時間外手当の減少という形で跳ね返ってくる。

私の場合は月の手取りで1割程度でした。金額として大きいかどうかは人によりますが、毎月続くと考えると無視はできません。

家庭の時間を増やすことに、金銭的なコストがある。この前提を認めないと、次の話ができません。

埋め方を間違えると、元も子もない

減った分を埋めるために非常勤を増やす。ここまでは自然な発想です。

問題は、埋め方を間違えると、そもそも何のために早く帰るようにしたのか分からなくなることです。

時給の高い求人を取って、片道1時間半かけて土曜日を丸ごと使う。金額だけ見れば埋まります。でも家にいない土曜日が月に2回増えたなら、定時で帰っている平日の意味が薄れる。

だから選び方の基準を、時給単独から組み替える必要がありました。

実際に使っている4つの基準

現在、非常勤の求人を見るときに確認しているのは次の4点です。優先順位もこの順番です。

① 時給

当然ながら最初に見ます。目安にしているのは時給1万円前後です。

ただし後述するとおり、この数字だけで判断すると高確率で失敗します。

相場より明確に高い求人には、たいてい理由があります。人が定着しない、業務量が多い、緊急対応が多い、といった理由です。高い時給を見たら、まずなぜ高いのかを確認する。逆に相場より低くても、次に述べる条件が揃っているなら選ぶ価値があります。

② 移動距離

これが実質的に一番効きます。

片道の移動時間は、拘束時間に加算されているのと同じです。往復2時間なら、8時間勤務の求人は実質10時間拘束になる。

実際に計算すると、時給の順位が入れ替わります。

項目求人A求人B
時給11,000円10,000円
勤務時間8時間8時間
往復の移動2時間20分
支給額88,000円80,000円
実質の拘束時間10時間8時間20分
実質時給8,800円9,600円

支給額はAの方が8,000円多いのに、実質時給ではBが800円上回ります。しかも移動中は休んでいるわけでも家にいるわけでもないので、体感の消耗はAの方が明らかに大きい。

時給の差より移動時間の差の方が、生活に与える影響が大きい。この計算をするようになってから、選ぶ求人がはっきり変わりました。

③ 平日は18時までで終わること

平日に入れる場合、18時に終わることを条件にしています。

保育園と学校の時間に間に合わなければ、非常勤を入れた日だけ家庭の負担を配偶者に全部回すことになります。それは「収入を埋めるために家庭を犠牲にする」という、最初に避けたかった構図そのものです。

外来の非常勤は終了時刻が曖昧なことがあるので、事前に確認します。「18時終了」と書かれていても、実際には最終受付が18時で、終わるのは19時ということがある。ここは求人票の文字ではなく、実際の運用を聞かないと分かりません。

④ 土日は、負担の軽い病院の日当直

土日を使う場合は日当直を選びます。ただしどこでもいいわけではありません。

同じ「日当直」でも、病院によって中身がまったく違います。土日は1日まるごと家庭から抜けることになるので、そのコストに見合う条件かを見極める必要があります。

私が求人情報から確認しているのは、次の3点です。

急性期病院か、慢性期病院か。 ここでまず大きく分かれます。急性期であれば、当直中に新規の判断を求められる場面が増えます。

救急車を受け入れているか。 受け入れている病院の日当直は、救急外来の対応が業務に含まれます。件数によっては一晩中動くことになる。

業務の中心が入院患者の管理か。 基本的に入院患者の管理がメインで、たまにかかりつけの患者さんの外来対応が入る程度であれば、拘束時間が長くても消耗は限定的です。夜間にほとんど呼ばれない日当直なら、翌日に残りません。

この3点は求人票に書かれていることが多いので、応募前に判断できます。逆にここを見ずに時給だけで日当直を取ると、一晩中動く当直を月2回入れることになり、平日の育児参加ごと崩れます。

他の医師はどう働いているか

自分の基準が特殊なのかどうかを確認するために、調査データも見ておきます。

医師転職研究所が2023年に実施した調査(1,702名)によると、

項目結果
非常勤勤務の実施率75%
頻度の中央値週1日
週1〜2日43%
平日午前に勤務67%
目的が「収入の確保・増加」88.8%
求人サイト・エージェントを利用77.8%
知人の紹介36.5%

週1日、平日午前というのが最も一般的な形です。ここは自分の感覚とも一致します。

目的の88.8%が収入であることも、率直な数字だと思います。スキル維持(33.5%)や依頼されて(24.4%)という回答もありますが、大半は経済的な理由で働いている。

条件で選ぶなら、探し方を変える必要がある

ここまでの4条件、つまり「時給・移動距離・18時終了・日当直の中身」を全部満たす求人は、そう多くありません。

そして条件を絞るほど、自分だけで探すのは難しくなります。求人サイトの掲載情報だけでは③が判断できないからです。「18時終了」の実際の運用は求人票に書かれていない。

実際に使っている手段は3つで、役割が違います。

求人サイトへの登録 — 相場観をつかむのに使います。自分の診療科・地域でどのくらいの時給が出ているかを知らないと、提示された条件が良いのか悪いのか判断できません。まず相場を知るために登録します。④の日当直の見極めも、掲載情報から自分で判断できます。

エージェント経由 — 求人票に書かれていない条件を確認したいときに使います。「18時までに実際に終わるか」「夜間の呼び出しはどのくらいか」といった点は、その病院を知っている担当者でなければ答えられません。

スポット求人アプリ — 日程が空いたときに、その日だけの求人を探す用途です。

このうち求人サイトとエージェントの役割を1つでカバーできるのが、医師バイトドットコムです。運営はメディウェル(アインホールディングス子会社)、登録は無料で、定期非常勤・スポット・日当直のいずれも扱っています。

使いどころがあるのは条件交渉の代行です。③の「18時に実際に終わるか」、④の「夜間にどのくらい呼ばれるか」は、どちらも求人票からは読み取れません。応募前にここを確認してもらえるかどうかで、結果はかなり変わります。

それでも、うまくいっていないこと

正直に書くと、この方法で全部解決したわけではありません。

条件に合致した案件を見つけること自体が、そもそも難しい。4つの条件を全部満たす求人は数が限られていて、タイミングが合わなければ待つことになります。

そして担当者によって当たり外れがあります。こちらの条件を伝えても、なかなか合う案件を提示してくれないことがある。相手先との繋ぎ役としてうまく機能してくれず、確認したいことが確認できないまま話が進んでストレスを感じたこともありました。

このあたりは、複数の手段を並行して持っておくしか対処法がないと思っています。ひとつのエージェントに絞ると、その担当者の質に結果が丸ごと左右されてしまう。条件を絞り込むほど、探す経路は複数あった方がいいというのが、現時点での結論です。

まとめ

育児のために早く帰ると、時間外手当という形で収入が減ります。これは避けようがないので、埋め方を設計する話になります。

埋めるときに時給だけを見ると、移動時間と拘束時間で家庭の時間を削り直すことになり、元の目的が消えます。だから次の4点を順番に見ています。

  1. 時給 — 1万円前後を目安に。相場から外れて高い場合は理由を確認する
  2. 移動距離 — 往復の時間を拘束時間に加算して実質時給を出す
  3. 平日は18時まで — 求人票の文字ではなく実際の運用を確認する
  4. 土日の日当直は中身を見る — 急性期か慢性期か、救急車を受けているか、業務が入院管理中心か

このうち③は求人票から読み取れないので、そこを埋められる探し方をする。それだけの話です。


参考にした調査

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