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当直を月2回から1回に減らしました。
やったことは、上司に相談しただけです。制度の申請書は出していません。就業規則も確認していません。具体的な事情を話したら、すんなり通りました。
拍子抜けするほど簡単だったのですが、決めるまでには時間がかかりました。迷っていたのは収入が減ることで、そこだけがずっと引っかかっていた。
後から計算して分かったのは、その減り方を、私はかなり大きく見積もっていたということです。この記事では、実際にいくら減ったのか、当直を1回外して何が変わって何が変わらなかったのかを書きます。あわせて、制度の側から当直を外そうとすると、どこで詰まるのかも整理しました。
必要だったのは、制度ではなく一言だった
検索して出てくる記事は、「当直なし」をかなり重い決断として扱います。年収が数百万円下がる。専門医の更新要件を確認しておけ。臨床の勘が鈍る。戻るときのハードルがある。
どれも間違いではありません。ただしそれは、当直をゼロにして職場も変える場合の話です。
私がやったのは、月2回を1回にしただけです。職場は変えていないし、当直そのものをやめたわけでもない。それでも、平日の夜が月に1回戻ってきます。
相談のときに意識したのは、具体的に話すことでした。「子どもが小さいので」ではなく、どういう事情でどの時間帯が成立しないのかを説明した。断られる前提で構えていたのですが、その場で話が通りました。
ゼロか現状維持かの二択で考えていたこと自体が、間違いでした。1回だけ減らす、曜日を固定する、日直だけにする。こうした中間の選択肢は、交渉の対象になります。後述する自治体の調査でも、病院側は免除か現状維持かではなく、回数と中身の調整として処理していました。
迷っていた金額は、手取りでは月1万円台だった
当直手当は、私の勤務先では1回あたり2〜3万円程度です。月2回なら4〜6万円。これが半分になるのだから、月に2〜3万円減る。そう考えていました。
この計算が間違っています。額面で考えていました。
バイト代と同じで、当直手当にも本業で到達している一番高い税率がそのまま乗ります。給与所得控除は年収850万円超で上限195万円に達しているため、手当の分はほぼ丸ごと課税所得に上乗せされるからです(詳しくは確定申告の記事)。
当直1回分の手当について、手元に残る額を計算するとこうなります。
| 課税所得の区分 | 手当2万円の場合 | 手当3万円の場合 |
|---|---|---|
| 695〜900万円(税率23%) | 手取り 13,303円 | 手取り 19,955円 |
| 900〜1,800万円(税率33%) | 手取り 11,261円 | 手取り 16,892円 |
※所得税+復興特別所得税(税率×1.021)と住民税10%を差し引いた額。住民税は翌年6月から本業の給与で天引きされる分
当直1回を手放して実際に減るのは、手取りで1万1千円から2万円です。年間にすると13万円台から24万円程度。
もちろん小さい額ではありません。ただ、月に2〜3万円が消えると思って迷っていたものが、実際には月1万円台でした。先に計算していれば、もっと早く相談していたと思います。
減った分を埋めたいなら、非常勤を1回増やすという選択肢があります。ただし時給だけで選ぶと移動時間で家庭の時間を削り直すことになるので、私は時給以外の4つの基準で判断しています。求人サイト、エージェント、スポット求人アプリの3つを併用していて、このうち求人サイトとエージェントの役割を1つでカバーできるのが医師バイトドットコムです。
運営はメディウェル(アインホールディングス子会社)で、定期非常勤・スポット・日当直を扱っています。
当直を1回外しても、夜はそれほど戻ってこない
ここが、実際にやってみて一番意外だった部分です。
私の夜間の拘束は、当直だけではありません。オンコールが月に8回あります。当直が月1回なので、何らかの形で夜間に拘束されている日は月に9日ということになります。
つまり当直を2回から1回に減らしても、夜間の拘束日数は月10日から9日に変わっただけです。割合でいえば1割しか減っていません。
ただし、だから負担が変わらなかったかというと、そうではありません。オンコールで実際に呼ばれるのは月に1回くらいで、残りは自宅で何も起きずに朝を迎えます。
拘束の回数と、実際に何かが起きる回数は別物です。カレンダー上はオンコールの方が8倍多いのに、生活への影響は当直1回の方がはっきり大きい。病院で一晩過ごす日と、自宅で電話が鳴らずに終わる日では、翌日に残るものが違います。
これを踏まえると、「当直なし」という条件だけで職場を探すのは、少し雑だと思います。確認すべきなのは次の2つです。
- 夜間に拘束される日が月に何日あるか(当直+オンコール+日直)
- そのうち、実際に動くことになるのは何日か
この2つは別々に聞かないと出てきません。「当直なし」の求人でオンコールが月8回あるなら、夜の自由は思ったほど戻りません。逆に当直が月2回でも、宿日直許可があって夜間にほとんど呼ばれない病院なら、翌日への影響は限定的です。この許可の有無で当直の中身がどう変わるかは、スポットバイトを求人票の段階で見分ける記事に書きました。
制度で当直を外そうとすると、ここで詰まる
私は上司への相談で済ませましたが、制度を使う道もあるはずだと思って、後から調べました。結果として、想像していたより使える場面が狭いことが分かりました。
育児・介護休業法で夜間の勤務に直接効く条文は「深夜業の制限」です。小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、会社は午後10時から午前5時までの間に働かせてはいけない。1回の請求につき1か月以上6か月以内で、回数の制限はありません。
当直を外すのにそのまま使えそうに見えます。ただし請求できない労働者が定められていて、そこに次の一項があります。
深夜において子の保育ができる同居の家族がいる労働者。
同居の家族の要件は、16歳以上で、深夜に就労しておらず(深夜の就労が月3日以下を含む)、負傷や疾病などで保育が困難な状態になく、産前産後休業中でないこと。
我が家は配偶者が深夜に働いていないので、この時点で請求の対象から外れます。同じ条件に当てはまる家庭は、かなり多いはずです。
ほかの制度も見ましたが、当直には届きにくい。所定外労働の制限(残業免除)は2025年4月から対象が小学校就学前まで広がりましたが、これも時間外労働の制限も、労働基準法上の労働時間を前提とした制度です。宿日直許可を受けた当直は労働時間等の規制の適用が除外されるため、残業免除を請求したからといって、許可のある当直が自動的に外れるとは整理しにくい。ここは法解釈に関わるので、実際の扱いは勤務先の労務担当か、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に確認してください。条文を根拠に当直を外す道は、思っていたより細いというのが調べた結論です。
一方で、使える変更もありました。2025年10月1日から、事業主に個別の意向聴取と配慮が義務づけられています。本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき、および子が3歳になる前の時期に、勤務時間帯・勤務地・両立支援制度の利用期間・仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直し等)について、労働者の意向を個別に聴取しなければならない、という制度です。
最後の「業務量、労働条件の見直し」は、当直の回数をそこで持ち出せる項目です。自分から切り出すのではなく、職場から聞かれる機会が制度としてできたという意味があります。
ただし私の勤務先では、面談も書面もありませんでした。時期的に自分が対象だったのかも確認していないので、勤務先に問題があったと言うつもりはありません。ただ、聞かれるのを待っていても来ないことはある。制度の存在を知っていれば、こちらから持ち出す材料にはなります。
「育児中の当直免除制度」は、男性が使う前提で作られていない
調べていて、もう一つ分かったことがあります。
愛知県が県内の医療機関に対して実施した育児期継続就労支援のアンケート調査(平成30年度)によると、妊娠・育児中の当直免除や緩和制度などがある病院の割合は49.4%でした。半分の病院には、そもそも制度がないということになります。
注目したのは、制度がない理由として県が挙げている説明です。医師数が少なく制度の対象となる医師がいない、男性医師しかいない、といった理由が並んでいます。
行政の側の整理でも、育児中の当直免除制度は女性医師を対象とするものとして数えられている。男性しかいない病院は「対象者がいないので制度を作っていない」とカウントされるわけです。
実際、当直と育児について書かれた資料を探すと、厚生労働省の検討会資料も、日本医師会の調査も、産婦人科医会の報告も、ほぼすべてが女性医師を対象としています。男性医師が子育てを理由に当直を減らすという話は、商業メディアにも行政資料にも、ほとんど見当たりません。
制度がないわけではなく、自分が対象だと思われていない。これが、言い出しにくさの正体だと思います。
だからこそ、私のように口頭の相談で片付くケースが出てくるとも言えます。同じ調査の自由記述には、病院側の回答として「回数の制限」「当直帯を統一する」「希望日のみの当直」「日直のみで当直業務は免除」「制度化はしていないが運用上で実施している」といった記述が並んでいます。制度の有無を調べるより、何ができるかを聞いた方が早い。これは実感と一致します。
それでも、うまくいっていないこと
正直に書くと、いまの状態には弱点があります。
私の当直が月1回であることには、何の根拠もありません。
制度の申請書を出していないので、書面は一枚も残っていません。就業規則に育児中の当直免除の規定があるのかどうかすら、いまだに確認していない。あるのは上司との口頭の合意だけです。
これは、相手が変わったら終わる話です。上司が異動したら、引き継がれる保証がありません。人が減って当直の枠が埋まらなくなれば、戻してほしいと言われる可能性があります。そのとき、断る根拠が私の側にない。
すんなり通ったことに安心して、そこで止めてしまいました。本来なら、就業規則を確認して、該当する制度があるなら申請書を出して、書面にしておくべきでした。その手間を惜しんだ結果、一番脆い形のまま運用しているのが現状です。
おそらく、同じ状態の人は多いのではないかと思います。話が通ってしまうと、制度を調べる動機がなくなる。困っていないから、そのままになる。
次に人事の面談がある機会に、制度の有無だけは確認しようと思っています。
まとめ
- 当直はゼロか現状維持かではない。回数を1回減らす、曜日を固定する、日直のみにするといった中間の調整が交渉の対象になる
- 当直手当には本業の高い税率が乗るので、1回あたりの手取りは1万1千円から2万円程度。額面で見積もると迷う期間が長くなる
- 当直を1回外しても、オンコールが残っていれば夜間の拘束日数はあまり減らない。拘束の回数と、実際に動く回数は別々に確認する
- 育児・介護休業法の深夜業の制限は、深夜に保育できる同居の家族がいると請求できない。配偶者が夜に働いていない家庭では使えない
- 育児中の当直免除制度がある病院は約半数。制度がない理由に「男性医師しかいない」が挙がる程度には、男性が対象として想定されていない
- 2025年10月から個別の意向聴取が事業主の義務になった。業務量や労働条件の見直しを持ち出せる項目がある
- 口頭の合意だけで運用すると、相手が変わった時点で根拠がなくなる
参考にした資料

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